クラブの技術革新は凄いもので、次々と新しいモデルのクラブが開発されています。
特にドライバーは新モデルが多く、ドライバーの買い替え時に、どのモデルを選択していいか迷う方が多いのではないでしょうか。
クラブ選択する場合には、試打をして測定データーを見ながら判断をすると思いますが、クラブの重心特性を知ることで、クラブ性能を把握することができクラブ選択の最終判断に役立ちます。
ゴルフクラブの特徴は、テニスのラケットと違い、グリップとシャフトの延長線上から離れたところに重心とスイートスポット(芯)がある点です。
重心はヘッドの質量が集まる1点で、ヘッド内部の空洞に重心があります。
重心点からフェース面に垂直に引いた線が、フェース面にぶつかる点がクラブのスイートスポット(芯)となります。
ルール規制では、ドライバー体積は460cc以内と定められており、現在のドライバー体積はルール規制最大の460ccが主流です。
体積を大きくすることで、「ボールの上がり易さ」、「スピン量の制御」、「操作性」、「ボールの曲がりにくさ」といったドライバーの性能を引き出しています。
ヘッド体積が460ccでもヘッドの形を変えることで、ヘッドの重心位置が変わり、それぞれ特徴のあるクラブを作り上げています。
ドライバーの性能を知るために理解すべきキーワードは①クラブの重心距離と重心角、②重心深度、③重心の高さと低重心率の3点です。
重心距離と重心角
重心距離はシャフト軸から重心までの距離で、シャフト軸から重心までどのくらい離れているかを示しています。この重心距離は「ネック軸周り慣性モーメント」と密接な関係があります。
重心距離が長い⇒ネック軸周り慣性モーメントが大きい
重心距離が短い⇒ネック軸周り慣性モーメントが小さい
一方、重心角は重心アングルとも呼ばれ、シャフトを机の上に置き、ヘッドを垂らし時に、シャフト軸に対してヘッドが傾いた角度を重心角と呼びます。
当然、重心角が大きい方が、クラブのヘッドが自然に返るため(ヘッドローテーション)、クラブの捕まりが良くなります。
重心距離と重心角はヘッドの捕まりに大きく影響する要素となります。
重心距離の長いクラブはヘッドの返り難いクラブで、重心距離が短いクラブはヘッドの返り易いクラブということになります。
「ネック軸周り慣性モーメント」でいうと、この慣性モーメントの値が大きい程、返り難いクラブとなります。
ネック軸回りの慣性モーメントの数値は7000gcm2位が標準と言われ、6000gcm2へ近づくにつれ、フェースターンがしやすいと言われています。
ドライバーのヘッド体積の主流が460ccになっているので、最新のドライバーの重心距離は昔に比べ長くなっています。
選択のポイント
重心角が大きく、重心距離の長いクラブはリストターンを意識しないで振れる、優しいクラブです。(初級者・中級者)
重心角が小さく、重心距離の短いクラブは操作性を求めるゴルファー向けのクラブです。(中級者・上級者)
重心角が大きく、重心距離が短いクラブはスライサー向けのクラブです。
重心角が小さく、重心距離の長いクラブはフッカー向けのクラブです。
重心深度
重心深度は、ヘッドの重心からフェースまでの距離を指し、この重心深度は「ヘッド左右慣性モーメント」と密接な関係があります。
重心深度の定義は2種類あります。1つはヘッドの重心からフェース(スイートスポット)までの距離と、2つ目はヘッドの重心からリーディングエッジまでの距離です。
重心深度は、打ち出しの高さやスピン量の指標になります。
重心深度が深いと球が上がりやすく、スピン量が多くなります。
一方、重心深度が浅いとスピン量と球の高さが抑えられ、初速が上がります。
「ヘッド左右慣性モーメント」は重心深度と密接な関係があります。
重心深度が深い⇒ヘッド左右慣性モーメントが大きい
重心深度が浅い⇒ヘッド左右慣性モーメントが小さい
ヘッド左右慣性モーメントが大きいクラブは、芯を外した時の打ち出し方向のずれやボールの曲がり、飛距離のロスを軽減してくれます。
重心の高さと低重心率
重心の高さは、重心からフェース面に垂直に引いた線とフェース面とが交わる点からリーディングエッジまでの距離です。
重心の高さが低いと、スイートスポット(芯)より上に当たりやすくなりスピン量が減ります。
逆に、重心の高さが高いと、スイートスポット(芯)より下に当たりやすくなりスピン量が増えます。
低重心率はドライバーだけに適用される数値で、低重心率の値が低いほど低重心といえます。
低重心率の計算式は、低重心率(%)=重心の高さ÷フェースの高さ×100です。
63%位が低重心率の標準と言われ、60%前後なら低重心、66%前後なら高重心と言われています。
私が現在使用しているドライバーはピン社製のG410プラスで、以下の仕様となっています。
ピン社製G410プラスドライバー仕様
ヘッド 重量(g) | 重心距離(mm) | 重心深度(mm) | フェース高(mm) | SS高(mm) | 低重心率(%) | ヘッド 左右MI | ネック 軸回りMI |
200.5 | 45.2 | 45.4 | 54.6 | 38.6 | 70.7 | 5416 | 9527 |
備考:SS=スイートスポット(芯)、MI=慣性モーメント(単位:cmg2)
最新のドライバーの傾向としては、ヘッド体積が460ccということもあり、ネック軸周り慣性モーメントが大きくなっています。
G410プラスドライバーのネック軸周り慣性モーメントは他のドライバーと比べても数値はかなり高い値となっていますが、使用していて、ヘッドが特に返りにくいと感じたことはありません。
逆に、ネック軸周り慣性モーメントが大きいせいか、ヘッドローテーションが穏やかで直進性の高さを感じます。
ネック軸周り慣性モーメントとヘッド左右慣性モーメントの他に、クラブ全体の慣性モーメントを示す言葉として、「クラブ慣性モーメント」があります。
クラブ慣性モーメントはクラブの総重量、ヘッド重量、シャフト特性、クラブの長さ等が影響してきます。
シャフトが長く、クラブ総重量が重い⇒クラブ慣性モーメントが大きいクラブが全て振り易いクラブにはならないので、自分のヘッドスピードに合ったクラブを選択する必要があります。
ちなみに、G410プラスドライバーと同じ頃に販売されたモデルの仕様も表にしてみました。
参考にしてください。
テーラーメイド社製M6ドライバー仕様
ヘッド 重量(g) | 重心距離(mm) | 重心深度(mm) | フェース高(mm) | SS高(mm) | 低重心率(%) | ヘッド 左右MI | ネック 軸回りMI |
199.1 | 40.8 | 42.1 | 52.9 | 33.4 | 63.1 | 5030 | 8151 |
テーラーメイド社製M5ドライバー仕様
ヘッド 重量(g) | 重心距離(mm) | 重心深度(mm) | フェース高(mm) | SS高(mm) | 低重心率(%) | ヘッド 左右MI | ネック 軸回りMI |
201.9 | 42.3 | 37.3 | 54.5 | 34.3 | 62.9 | 4387 | 7492 |
キャロウェイ社製エピックFLASHスタードライバー仕様
ヘッド 重量(g) | 重心距離(mm) | 重心深度(mm) | フェース高(mm) | SS高(mm) | 低重心率(%) | ヘッド 左右MI | ネック 軸回りMI |
194.8 | 40.9 | 39.1 | 56.6 | 35.6 | 62.9 | 4623 | 7459 |
キャロウェイ社製エピックFLASHサブゼロドライバー仕様
ヘッド 重量(g) | 重心距離(mm) | 重心深度(mm) | フェース高(mm) | SS高(mm) | 低重心率(%) | ヘッド 左右MI | ネック 軸回りMI |
202.3 | 37.8 | 37.0 | 56.2 | 35.5 | 63.2 | 4633 | 6935 |
ドライバーの重心特性を知ることで、クラブの性能を理解することができます。
クラブを選択する場合には、試打をして測定データーを見ながら判断をすると思いますが、クラブの重心特性を知ることで、クラブ性能を把握することができ最終判断に役立ちます。
現在、調整機能の付いたドライバーが多く販売され、重心位置を変えることが可能になっています。
重心位置を変えることで、重心距離を長め、短めに、重心深度を深め、浅めに調整できます。
重心位置を変えると、操作性と振り心地はかなり変わります。
最新ドライバーの調整機能はまさに技術革新のたまものです。
ドライバー選択の際には、調整機能付きを条件に入れることをお勧めします。